4月にリリースとなった “Live in the Moment EP”にてRemixを制作した、NagiとKei Suganoの2人からなるユニット”Dazzle Drums”。自主レーベルである“Green Parrot Recording”の運営や、King Street Sounds、Afrocentric、Tony Records、Nulu Electronic, Tribe Records, BBE Musicなどの有名レーベルより楽曲をリリースし、DJとしてもパーティー”Music Of Many Colours”や”Block Party”のオーガナイズや、『Gilles Peterson』が主宰する”Worldwide FM”への出演など豊富なキャリアを持つ。そんな日本を代表するDJになりつつある二人に、今回のRemixの制作工程について伺った。
-リミックスはオリジナルから大きく変わり、「Dazzle Drumsらしいリミックス」に仕上がっていると思います。素材の使い方、曲の展開など、ダンスミュージックとしてのクオリティも非常に高く、プロデューサーだけでなくDJとしての豊富な経験も楽曲に反映されていると感じます。オリジナル曲を聴いた時の印象を教えてください。
Kei : 最初に聴いた時は、ニュースクールミーツオールドスクールでポジティヴな印象でした。DJの選曲やシチュエーションにもよりますが、ダンスフロアーでプレイされたら、「パッ」と空気が弾む世界観です。動くシンセベースやクッキリとしたシンセワーク、ヴォーカルに沿うようなファンキーなギター、ヴォーカルの抜き刺しなどの歯切れの良い展開、細かなリズムの作りこみ、楽曲性豊かな曲だとおもいます。途中のブレイクからのオルガンシンセの展開はオールドスクール感が好きな私にとって、「ああ!そうきたか。」みたいな。
TB-303の音の入れ方も絶妙だと思います。Back to 90’s Remixもその名のとおりのテイストがあって、オリジナルのブレイクの展開にある世界観を全面に出していますね。リミックスのお話を頂いた時は素直に嬉しかったです。この状況でDJにとってはとても大変なのでモチベーションは上がりました。感謝しております。
-原曲とは違いDJユースのリミックスに仕上がってますが、なぜこのようなリミックスになったのでしょうか?
Kei : 最初に頂いたオリジナルの音源を全てAbleton Liveに並べて、ひとつひとつ聴きこんでいきます。一瞬を逃さないよう、気に入った音を選んで、音に沿っていくように自分の音を作りこんでスケッチしていきます。サンプリングの工程が大好きなので、そこから膨らませて組み立てていきます。方向性を決める時もあれば、決めない時もあります。今回はオリジナルの世界観が前向きだったのと、この状況でDJも出来ないので、よりいっそう疾走感のある方向へ自然と向かっていきました。タイトルどおり今しか出来ない事をエモーショナルに、この状況がもし打開したらダンスフロアーで踊って貰いたいことを想像して。
-実際にどのような工程で制作しましたか?
Nagi : Keiくんが”ゴゴゴゴゴゴ”って集中して作ったてたところに、カフェオレ持って私が途中から参加してとにかく注文をつける。。。。。。申し訳ありません。。。
Kei : 日本という生活環境だと音楽制作を集中して続けることが難しいことが多々あります。私はありがたいことに家族の理解があって時間には恵まれているので感謝しております。昔はAKAIのサンプラーなどハード機材も使用していましたが、現在の機材はミニマムで、基本的にPC内完結です。カッコいいスタジオ写真とかなくてすみません!
Kei : 技術的な工程としては話したとおり、オリジナルの音源をサンプリングしていく所から初めて、基本となるループのセクションをまず作ります。アフリカンパーカッションとシンセサウンドが大好きなので、様々なパターンを録音していきます。
近年はあまり音数が多くならないようにより意識していますが、それでもどうしても多くなってしまいます。音を大胆に削る作業は難しいです。曲の展開を作ってから、何度も何度も試行錯誤していきます。日にちを置いてまた繰り返していきます。ヴォーカルに沿いながらリズムを組みたて、シンセをリズムに馴染ませていく作業。オリジナルのベースラインのメロディとは違ったアプローチ。またTB303の音が印象的だったので、ホワイトノイズを交えながら、ブレイク以降の世界観を作っていきました。
今回のリミックス作業の場合、Nagiにもちろんアドバイスを貰いながら、途中で大胆に音を差し替える作業やミュートする作業など、最初の勢いを失わないように進めていきました。毎月レギュラーでプレイしているBlock Party @ 0 Zeroでテストプレイしたり、違う環境で鳴らしてみたり聴いてみたりして客観的に完成の判断できればようやく出来たという感じです。基本的にサンプリングしてひたすら編集の作業の繰り返しです。
-制作に使用した機材や、Daw、ソフトシンセ、プラグインなどを教えてください。
Ableton Live 10、Native Instruments (Komplete、Kontakt、Massive、Reaktor、Form、Monark)、TDR Feedback Compressor II、TDR Nova、Ozone 8 Elements、Waves L3-LL Multi、Waves L3-LL Ultra Stereo
-リミックスで使用しなかったけど、普段から愛用している機材、プラグインがあれば教えてください。
Roland TR8S、Omnisphere 2、Vacuum Pro
-先ほどダンスミュージックとしてのクオリティが高いとお話ししました。DJとして制作をする際に気をつけている事はありますか?
Kei : ありがとうございます!ですが、まだまだだと思っています。終わらないクリエイトの世界。音ひとつひとつのチョイス。ミックスダウン。DJとしてテストプレイ。それらのことを何度も行う事がこれからも必要だと思っています。
-ユニットで制作することについてお伺いします。二人で制作する過程、役割分担を教えて下さい。
Nagi : 曲によって私が細かなメロディを作ったものをトラック毎にKeiくんに書き出して渡したり、もしくはある程度Keiくんが作ったものにソロだけ足したり。でも大体はKeiくんが”ゴゴゴゴゴゴ”って集中して作ったものを、後ろの椅子で聞いていろいろ注文をつける(もしくは褒めて伸ばす)パターンの方が多いです。
Kei : 自分で迷った時、煮詰まった時、完成のジャッジなどは、Nagiに何度も手伝って貰います。それがないと、Dazzle Drumsはここまで続けられなかったですし、出来なかったです。
-2人組だと意見が分かれる事もあると思います。その時はどうしてますか?「私たちの場合は、秦の意見にとりあえず賛同する形で僕がが折れる事が多いですw Hadaの方が経験も知識も多いと思っているので。」(by Ueno)「私もよく折れてると思いますがw Uenoの意見を聞いてベターになった事は多々あります。」(by Motoki Hada)
Nagi : どちらが先にその曲を作り始めたか、で主導権が変わります。Keiくんが先にある程度作った曲は、意見が分かれた時はKeiくんのチョイスを選びます。私がある程度先に作ったものなら、あれこれ注文をつけてミキシングを頑張ってもらいます。
Kei : 以前はベースの音量などでケンカして家出とかありましたw 今でも中々落ち着いて出来ない時もありますが、やはりそれほどプライベートで特別な空間と瞬間だと思います。特に最初の音を作りこむスケッチの段階。どうしても意見が分かれる時は、ヴァージョンを別々に作るという考え方もあります。どちらも正解の場合もあります。私達はライブが出来ないので、Charterhouseのお二人はライブが出来るので尊敬します!
-お二人とも使用しているDAWが違うとお伺いしました。そのような制作方法をとっている事には何か理由があるのでしょうか?
Nagi : 単純に私がAbletonが苦手なんです。セッションビューとアレンジメントビューの2種類あるっていうのがまず苦手です。どうしてそれだけでこんなに頭が混乱しちゃうのか自分でも解らないのですが。。。
私はLogic10.5.1です。ソングのタイムラインに沿って全てが進行してくれるシンプル安心設計です。良い音がいっぱいで、そして安い。予算を抑えて曲作り始めたいMacユーザーなら、 Abeltonユーザーに囲まれて右も左も分からず買っちゃう前に一旦Logicも検討してみて下さい。だって¥24,000ですよ。ハウスミュージックって元々は音楽的な教育を受けれなかった人が型落ちの機材を安く譲ってもらって作り始める、そんなジャンルだと思います。だってお金持ってないと良い曲作れない、そんなアンダーグラウンド・ミュージックって、つまらないですよね。
うちは実機もありますが、高い値段出して機材を購入することは皆無に等しいですね。。。あ!モニターは別です。GENELEC 8030の出音に裏切られたことはありません(そして誰かジェネレックとジェネリックを間違えないで言える方法を教えて下さい。)。そうだ私オーディオインタフェースSSL 2+使ってますが、音凄く好みです、お買い得です。NEUMANN TLM102(いま高いですね、安いうちに購入できてよかったです)を繋いで試しに声録ってみましたが4Kボタンはミッドハイがバツッと前に出る感じでスッキリしてるので、ハウスのトラックと馴染みが良さそうです。今年の後半はWavesのセールでゲットしたOvoxをガシガシ試すのが目標です。
-1人ではなく、2人で制作をする事にどの様なメリットを感じますか?
Nagi : 好みが「少し」ズレている、というのがメリットだと思います。うちの場合はDJもずっと一緒にやって長いので、曲に対しての判断基準がある程度2人の中で出来上がっています。つまり、長年培ってきたお互いの判断基準をベースにしながら自分の意見を伝え合うので、アドバイスに対して精神的に受け入れやすい。とエラそうに語ってますが、私は毎回叱られてばかりですよ。「Nagiもうちょっと頑張ろうよ~。。。」って言われます。でもめげない。出来ない処理とかは平気な顔して「後は任せた!」ってLogicから書き出したオーディオファイルとMIDIが入ったUSB渡して、オヤツ食べ始めます。
-今後の活動予定について教えてください。
Kei : 自分達のレーベルGreen Parrot Recordingは、去年毎月シングルリリースしてコンピレーションCDを作ったので、今年はVinylリリースを予定しています。コロナ渦なので、メインとなるDJなどの活動が出来ない中ですが、レギュラーをやっているWorldwide FMとThe Cabinn Radioでの曲紹介や、Bandcampでのリリース、状況が打開した時に少しでも出来る事を準備していきたいと思います。Contact TokyoでやっているパーティーMusic Of Many Coloursももっと皆さんとローカルのシーンを上げていけるようにしたいです。どうかCharterhouse含め、音楽へのサポートを皆さんよろしくお願いします!
- Dazzle Drums
NagiとKei Suganoの2人組ユニット。それぞれが90年代からDJ活動を開始。ダンス、ハウスクラシックスを軸に幅広い選曲で新譜を織り交ぜプレイする。2005年よりKing Street Sounds、Afrocentric、Tony Records、Nulu Electronic, Tribe Records, BBE Musicなどこれまで数多くの海外レーベルからリリースを重ね、国内外の幅広いDJがプレイ。2010年、自主レーベルGreen Parrot Recording始動。2016年7月Gilles Peterson主宰、Worldwide Festivalに出演、12月Boiler Roomに出演。2017年、パーティーMusic Of Many ColoursをContact Tokyoで始動。同年7月ヨーロッパツアー、10月アムステルダムADE出演。2018年7月2度目のWorldwide Festival出演を皮切りにヨーロッパ5カ国6都市をDJツアー。2019年”Unreleased Remixes & Edits”リリース。2020年コンピレーション”Night Jungle”リリース。レギュラーDJは毎月第二日曜日夕方開催Block Party @ 0 Zero、Worldwide FM(ロンドン)、The Cabinn FM(アルゼンチン)。
◾️Live in the Moment EP / Chartehouse
レーベル4周年記念としてリリースされたトラックを、EPとしてカセットテープでリリース。メロディアスなボーカルに、アシッドテイストを加えたディスコハウストラックをオリジナルに、Dazzle DrumsによるRemixと、Back to 90’sなCharterhouseによるセルフRemixを収録。カセットテープとデジタルでリリース。
- A1. Live in the Moment
- A2. Live in the Moment (Radio Edit)
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- B1. Live in the Moment (Dazzle Drums Remix)
- B2. Live in the Moment (Charterhouse Back to 90’s Remix)
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A1,A2 Co-Produced by Watusi (COLDFEET)
カセットテープ DLコード付
¥1,300
2021年4月25日リリース
bandcampで購入